■ 「妖精の森」ができるまで

 当院は平成10年4月に、当時でいうデイケアを開始しました。そのきっかけは、いったん入院された患者様が回復されてもなかなかご自宅に戻られない実態が明らかになってきたからです。そこで、在宅をサポートしようという取り組みのひとつとして、デイケアを開始しました。リハ室のスペースを使って1単位、20名を限度にスタートしました。入浴や昼食で午前中の時間はあっという間に過ぎてしまいます。午後のプログラムのうちで大事なもののひとつに、レクリエーションがあります。スタッフは手作りでさまざまな遊び(アソビリテーションと呼んでいます)を利用者様に提供させていただいていました。私はその様子をみて、なにかもっと違う、ほんもののレクリエーションを提供できないかという思うようになりました。スタッフは一生懸命にやっているのですが、レクの領域では素人です。また、ほとんどが集団でのレクで、ご利用者さまの個人的な意向や好みを取り入れるまでにはなりませんでした。

 平成12年に新築移転の設計の段階で、偶然にゲーム機器のナムコを紹介されました。そこで、ナムコがゲーム機を高齢者用に開発販売していることを知らされ、通所リハビリテーション(かつてのデイケア)用のスペースを、ナムコ流にデザインしてみたら面白いものができるかもしれないと考え、思い切ってデザインを依頼してみました。出来上がった図面を見て、まず「妖精の森」というコンセプトに彼らのゲーム専門集団としてのプロ魂を感じました。予算とスペースを検討し、グラウンドデザインが決まりました。柱を森の木々に仕立てて、鳥の声が聞こえ、妖精たちが住む空間の中での通所リハ。さらに、ゲームセンターで人気のあったスイートランドやバーチャル・ボーリング、パークゴルフ、ワニワニ・パニックなどを高齢者用に改造して導入しました。これらはすべて私もゲームセンターに行って遊んで楽しいと思ったものばかりです。

 病院らしくない空間とその中の数々のゲーム機によって、エンタテーメントのお膳立ては揃いました。ゲーム機は個人で楽しむものです。また、好きな時間に一人でも楽しめます。集団中心のレクに個別性、選択の余地を持っていただくことがゲーム機の目的でした。また、太い木々はお互いの視線をさえぎる効果もあり、居心地のよさを増すねらいでした。

 移転開院し、通所リハが始まり、反応が心配でしたが、スイートランドが大人気で一ヶ月のお菓子代が10万円単位になってしまい、参りました。もちろんゲーム代は無料です。とったお菓子を孫にあげると喜ばれたり、ご近所の方々に配るといっているご利用者様の笑顔はお金にかえられないものでした。

 幸いなことに多くのマスコミに取り上げられ、今でも取材が来ます。当院での取り組みは高齢者医療における娯楽性を追及するひとつのアプローチだと考えています。ゲームリハが実際どのような効果をもたらすかの数値化はできていませんが、楽しんでワニを叩き、ボーリングされている姿そのものが効果であると思っています。

2003/06/19(Thu) 19:13